プリント基板製造におけるプラズマ表面処理

電子部品の基板として、プリント基板は部分的に導電性を持っています。
このため従来は、プリント基板の処理に高電位の放電が加わりやすい大気圧下でのプロセスを利用することができませんでした。
電位を帯びやすい前処理方法を用いると短絡 (ショート) が発生し、回路レイアウトや部品を損傷する恐れがあるためです。
高感度電子機器に広がる新たな可能性
こうした電子機器用途に対応するため、プラズマトリートが開発したOpenair-Plasma®(オープンエアープラズマ) プラズマノズルは、コンポーネントに電圧※を加えることなく処理を行います。
独自の特長を備えたOpenair-Plasma®表面処理は、多様な産業分野への応用を可能にします。
※ 特定の用途において選択されたノズルの組み合わせでは、残留電位は0.1V未満です。
航空電子産業におけるSMD (表面実装部品) アセンブリの品質向上

航空電子機器に求められる安全基準は、他の産業製品と比べてはるかに厳格です。
例えば、組み立てられたプリント基板は、電子部品に対する最も過酷なストレス試験の一つである「バーンイン試験」を受ける必要があります。この試験により、潜在的な製造不良や、長時間の連続運転で故障する可能性のある部品を特定します。
Openair-Plasma®処理部品はバーンイン試験に合格
航空用無線機器に搭載される樹脂封止されたSMD (表面実装部品) は、バーンイン試験に先立ちOpenair-Plasma®によって前処理されます。この前処理により、実装後に施されるコンフォーマルコーティングの長期にわたる安定した密着性が確保されます。その結果、極めて繊細な電子部品にもかかわらずプラズマ照射による損傷を受けないことが確認されただけでなく、ポテンシャルフリーのプラズマ処理によって製品品質が向上することも示されています。
さらに、この微細洗浄と表面活性化の相乗効果により工程数が削減でき、生産プロセス全体の効率化を実現します。
アブレイシブプラズマ (プラズマ研磨) ― プリント基板ドリル穴の新しいデスミア処理プロセス

プリント基板加工において、スルーホールめっき前のドリル穴クリーニングは重要な工程です。
従来、この工程は主に複雑な化学処理や低圧プラズマ処理で行われており、製造ラインから分離した専用のチャンバーシステムを用いるため、製造プロセスを中断する必要がありました。
これに対し、Openair-Plasma®を用いたインラインでのデスミア処理は大気圧下で行えるため、プロセスの簡略化と高速化が可能になり、コスト削減にもつながります。
さらに、産業用ガスとの併用により、Openair-Plasma®プロセスは強い研磨性を持つプラズマを生成し、優れた選択性と高い除去率を実現します。現在、この新しいプラズマ技術は初めての導入に向けて準備が進められています。
Openair-Plasma®活性化による多層構造の強力な接着

フレキシブルプリント基板 (FPC) は、現在のモバイル電子機器において欠かせない存在です。
回路部品の高密度化が進むなか、多層構造で構成されるケースが増えています。多層構造が安定して機能するためには、各層間の確実な接着が不可欠です。
Openair-Plasma®による表面活性化は、この層間の接着性を大幅に向上させます。大規模な応用が求められる場合には、RD1010プラズマノズルを搭載したシステムが使用されています。
プリント基板製造装置の日本のトップメーカーである日立製作所は、自社システムにこのノズル技術を採用しています。