航空機製造における材料変化 ― プラズマによる高効率な前処理
航空機製造分野では、使用される材料が大きく変化しています。これまで、機体外板やストリンガ (縦通材) にはアルミニウム合金がほぼ標準的に用いられてきましたが、現在では、これらの部材は主に炭素繊維強化プラスチック (CFRP) で製造されています。
プラズマコーティング技術の活用により、製品寿命の延長や安全性の向上に加え、大幅なコスト削減が可能になります。
航空宇宙分野の製造では、構造用外板、複合材パネル、ドローン機体など、大きな表面積を持つ部品に対して、均一で高品質な表面前処理が求められます。プラズマトリートの先進的な大気圧プラズマシステムは、こうしたニーズに対応するために設計されており、平面パネルから複雑形状の部品まで、広範囲の基材を1回の処理で均一に活性化できます。
モジュール構成のノズルユニットや、広い処理幅に対応したノズルを活用することで、非極性材料に対しても、高速かつ再現性の高い表面活性化処理を実現します。これらのシステムは、生産セルやインライン工程にスムーズに統合でき、Industry 4.0にも対応しているため、自動制御、モニタリング、トレーサビリティの確保が可能です。このアプローチにより、プライマー処理や機械的研磨の工程を削減でき、サイクルタイムと運用コストの低減に貢献します。さらに、繊維損傷やガルバニック腐食といったリスクを抑えながら処理できる点も大きな特長です。
大型機体の胴体外板、回転翼機の構造部品、無人航空機 (UAV) などの処理において、プラズマトリートのモジュール式で拡張性の高いプラズマ技術は、航空宇宙分野の製造現場で求められる性能を提供します。大面積処理への対応、高いスループット、プロセス信頼性を兼ね備え、航空宇宙製造における安定した表面処理を支えます。
- プラズマ前処理によるCFRP部品の安定性向上
- Openair-Plasma®(オープンエアープラズマ) による、接着・塗装などの後続工程での高品質かつ信頼性の高い処理
- 大型部品にも対応する、選択的・ロボット誘導型インラインプラズマ前処理
この材料が航空機の工業用途に初めて採用されたのは2007年で、Boeing社がB787ドリームライナーに使用したのが始まりです。その後も改良が進み、現在では、例えばAirbus社のA350XWBでは、機体構成材料の40%以上をCFRPが占めています。
プラズマポリマーコーティングによる長期安定した防食 ― 六価クロム (Cr6) プライマーを使用しない環境配慮型プロセス
航空機製造では従来、最適な耐腐食性を確保するため、六価クロム (Cr6) を含有するプライマーが使用されてきました。これらは、最長30年の長期使用を想定した防食手法として用いられてきました。
PlasmaPlus®(プラズマプラス) は、有毒性の高い六価クロム (Cr6) プライマーに代わる、プラズマ重合による化学的なプラズマコーティングです。乾式プロセスで、対象部位に選択的な処理が可能な点を特長としています。プラズマエネルギーと、超微細で均一な成膜が可能なプラズマコーティングを組み合わせることで、表面エネルギーが向上します。これにより、塗装に最適な表面状態を形成するとともに、接合部において長期安定性に優れた密着特性を発揮します。
Aurora低圧プラズマ技術 ― 塗装・接合前の炭素繊維複合部品の洗浄
Auroraプラズマ技術の活用例として、タービン金属ハブとの構造接合前に行う炭素繊維タービンブレードの前処理が挙げられます。プラズマによる前処理により、こうした異種材料同士の組み合わせが可能となり、軽量で静粛性に優れたタービンエンジンの製造が実現します。
Aurora低圧プラズマプロセスの利点の一つは、プラズマが隙間や微細な溝まで浸透し、複雑な形状であっても全方向から均一に処理できる点です。すべての処理工程は、処理順序・強度・ガス組成を明確に定義することができ、処理サイクル中にはイオン化可能な機能性ガスやプロセス流体が低圧チャンバー内で処理されます。これにより、シンプルで再現性の高いプロセスを実現します。
ハイテク複合材向け離型技術 ― Openair-Plasma®/Auroraプラズマ技術による離型剤削減
航空機製造において、繊維強化プラスチックの使用は大幅な軽量化を可能にします。特に炭素繊維 (CFRP) やガラス繊維 (GFRP) などの繊維強化プラスチックは、金属構造と比較して高い構造安定性を備えています。
主に大型部品は、いわゆる「プリプレグ」を積層した層構造としてオートクレーブ内で成形されます。容易な離型を実現するためには、金型への付着対策が必要となります。従来はFrekote®などの溶剤系離型剤が広く使用されてきましたが、離型時に部品表面へ残留物が残るという課題があります。これらの残留物は、複雑な手作業工程により除去する必要があります。
プラズマ離型コーティングの特長と利点
- 手作業による煩雑な洗浄工程が不要となり、生産効率が向上
- 金型および部品の汚染を防止
- 溶剤系離型剤や洗浄剤を使用しないため、VOC削減に貢献
- ムラのない均一な成膜により、高品質な表面状態を実現
プリプレグ製造向けプラズマ前処理 ― Kevlar®、ガラス繊維、カーボン、超高分子量ポリエチレン (UHMWPE) に対応
プリプレグ材料 (予備含浸繊維) は、繊維強化部品の製造に用いられる繊維系の半製品です。圧力と温度を加えることで、複数層のプリプレグが一体化して成形されます。完成部品の安定性を確保するためには、プリプレグの積層構成に加え、繊維と反応樹脂との最適な接着性が極めて重要となります。
Auroraプラズマによる繊維材料の前処理
繊維とマトリクス樹脂間で効果的な荷重伝達を実現するためには、樹脂塗布前に繊維表面を清浄な状態にしておく必要があります。Auroraプラズマによる繊維組織の前処理により、樹脂の最適な含浸性が得られます。